革砥ベルトで剃刀をお手入れしていた昔の床屋さん
2022/09/01
サロンこぼればなし
床屋から姿を消した革砥ベルト
みなさんこんにちわ(✿✪‿✪。)ノ
かつて床屋さんには革砥ベルトという必要不可欠な備品がありました。
よく床屋のおやじさんがカミソリを革でシュッシュッとやってたあれ♪
1980年代以降の若い世代にはピンとこないかもしれませんが、ひと昔前には
床屋さんでヒゲ剃り用の剃刀(レザー)を革でシュッシュッと研いでいた姿を
思い出す方も多いのではないでしょうか♪
ひげを剃る前に床屋さんは、必ずと言っていいほど剃刀(レザー)を革のバンドに
シャーッとこすりつけてからヒゲ剃りの施術に当たったものでした。
そんな姿は、現在ではもうほとんど見かけなくなりましたね。
言うまでもなくうちのサロンでも、オープン以来
一度も革砥ベルトは使ったことはなく
そもそも設備として備品すらしてはいませんwww
しかし、たまにお客様との会話の中で「昔はこうだったよね!」なんて
懐かしむこともしばしばありました。
実家で見つかった古い革砥ベルト
かつて床屋の必需品だった革砥ベルトですが
ある日、母親が家の掃除をしていたら「こんなものが見つかった」と言って
手にして持ってきたのが、この古ぼけた革砥ベルトでした。
昔、今は亡き父親が経営していた床屋の備品として仕入れて
結局使わずじまいでそのまま実家の倉庫で眠っていたものです。
もちろん未使用品なので新品と言ってもいいと思うのですが
少なくとも半世紀以上は経っているものと思われます。
包まれていた透明のセロハン紙は粉々になっていたので見つけた母親が
その場で処分したそうです。
またこれ自体ももう要らないものなのですぐに捨てようかと思ったらしいのですが
一応自分に聞いてからにしようと思い留まって「これどうするね!」
なんて言いながら持ってきていました。
いやいやいやっ!捨てちゃダメでしょwww
危うく捨てられるところを、速攻で引き止めて
うちのサロンの「懐かしの床屋グッズ」ということで
取っておくことにしましたよ。
いや、ホントヤバかったね~‼
母親がその場で捨てずに、自分のところに持ってきてくれたのは
ラッキ-でした(^^♪
ボロボロになった仕様説明が書かれた包装紙が長い年月の
冬眠期間を物語ってますね。
実はこの紙も、母親は自分の目の前でぐしゃぐしゃにしようとしてましたが
間一髪、止めさせることができました。
ヤベェ危なかった~www
裏側にはキャンパス地のような布砥と呼ばれるベルトのついた
革砥ベルトと合わせて二本組になっています。
ブランドロゴの型押しも薄れてしまってます。
年季を感じますね(*^^*)
革砥ベルトとは
ところで...
そもそも革砥ベルトとはどういうものだったのでしょうか?
記憶をたどって、親父が話していたことを思いだしてみると...
剃刀(レザー)は、実際にヒゲを剃る度に刃先が反り返ってしまうので
毎回革砥ベルトに擦り付けてそれを修正して切れ味を復活させているんだと
言っていました。
そして仕事が終わると、親父はいつも店の傍らで専用の砥石を使って
剃刀(レザー)やハサミを研いでいた後姿が脳裏に思い浮かびます。
もちろん剃刀(レザー)の仕上げには革砥ベルトを使っていたに違いありません。
そんな革砥ベルトの効果としては
- 剃刀他の刃物を砥石で研磨した際に残留する微細なカエリやバリを除去し
髭剃り等の際の安全性を高める。 - 剃刀等の側面に出来たささくれ状の剥がれ等を滑らかにする。
- 剃刀等の側面に付着した上皮や皮脂、または微細な刃こぼれによる金属粉
その他の微小な異物などを除去する。
また画像にもあるようにキャンパス地のような布砥は表面が革砥よりも粗く
革砥よりもバリやカエリまたは、皮脂などを除去する効果が強いと考えられ
刃物を革砥にかける前に、刃先に残った皮脂汚れや水分等を除去する目的で
使います。
要するに簡単に言えば
日頃の営業中には、剃刀(レザー)を使った後に、まず最初に布砥ベルトで
剃刀(レザー)に付着した皮脂や汚れと水気を落としながら反り返った刃を修正し
さらに革砥ベルトで刃先を磨き上げて剃り味を復活させていたのです。
そして一日の終わりに、その日酷使した剃刀(レザー)を研ぎ直す場合は
ちゃんとした専用の砥石などを使い
仕上げに革砥ベルトを使って刃先を整えておき、明日のお客様を迎えるのが
床屋さんの日課だったのです。
床屋で見かけなくなった革砥ベルト
では、なぜ床屋さんから革砥ベルトが姿を消していったのでしょうか
ちゃんとした理由を調べたわけではありませんが
現場の感覚としては、いくつか思い当たることがあります。
まずは、なんといっても替え刃式の剃刀(レザー)の普及にあると思われます。
毎日の仕事として剃刀(レザー)使っている以上、やはり仕事の効率を考えると
切れなくなった刃をその場でサッと交換して使えるのはとても助かるし有り難いものです。
そして何よりも、お客様に不快な思いをさせることが激減したのが
替え刃式の最大のポイントかもしれません。
剃刀(レザー)を研ぐ技術の必要性も薄くなり、その分本来の仕事である
スタイリング技術の向上に時間を当てることが可能となりました。
次に衛生面ですが、1980年代以降エイズなどの感染症が
社会問題になったことも大きな要因でしょう
直接人肌に触れる剃刀(レザー)を、何度も使い回すのはやはり問題があります。
使う度に、清掃と消毒を行うのは当たり前の常識ですが、せっかく消毒した剃刀(レザー)を
革砥ベルトに擦り付けて、雑菌などを再び付着させてしまっては意味がありません。
切れ味をある程度保てる替刃の普及によって、革砥ベルトを使う必要もなくなり
清掃・消毒された剃刀(レザー)すぐに使うことができるようになりました。
使い終わったら、また清掃と消毒!
そして切れ味が悪くなればすぐに新しい替刃に交換です。
本来なら、お客様お一人ごとに替刃を取り換えるほうが、よりベストだと思いますが
採算上なかなかそういう訳にもいきません。
今後のメーカーさんの努力に期待したいところです(^^♪
ちなみに、米軍基地内で軍人を相手にしている床屋さんでは衛生面ではより厳しいらしく
剃刀(レザー)を使う場合は客様お一人様ごとに替刃を交換することが義務づけられていて
替刃の使い回しは禁止されているそうです。
そんな状況では、採算を合わせることは無理だということで
シェービング(ひげ剃り)、ネックシェーブ(襟剃り)などの
剃刀(レザー)を使う技術は、ほとんど行われてないそうです。
刃物マニア
床屋さんからは、ほとんど姿を消してしまった革砥ベルトですが
アウトドア、サバイバル、そして家庭の包丁などのさまざまな刃物を
愛好する方々にとっては現在でも使われているようです。
やはり切れ味が、とてもよくなると評判のようで
革砥ベルトを自作するマニアの方も多いのだとか。
自分の店では全く使うことはなかった、昔の床屋の道具ですが
一部の業界や、趣味の世界ではまだまだ必要不可欠なツールとして
存在し続けていたのは意外でした。
自分自身も意外に刃物などは好きなので、今回の革砥ベルトは
とりあえずディスプレーとして取っておいて、趣味のレザークラフトで
でも革砥なるものを作って刃物コレクションに磨きをかけてみようかな(^^♪
それでは今回はこの辺で
最後までお付き合いありがとうございました。
HairShop IVY HOUSE