ミニの歴史|長物と呼ばれる憧れのモーリスミニトラベラー&カントリーマン

MORRIS MINI TRAVELLER

60年代のミニは1960年に登場したミニバンをベースに、全長が長く観音開きのドアを装備した派生モデルが多くラインアップされていた。例えばオースチン・ミニ(当時は複数のブランド名でミニが販売されていた)のカントリーマン、モーリス・ミニのトラヴェラー、そしてミニのクラブマン・エステートなど。ちなみにカントリーマンのようにウッド・フレーム(木枠)が装備されているのは、他にはトラヴェラーのみとなっている。

MORRIS MINI TRAVELLER モーリス・ミニ・トラベラー(67)
CAR No. M-AW4-997540
ENG No, SAM – U-H209059

ミニはFFエンジンであるため、シャシーのフロント側を使い回せば、後半は自由なレイアウトが可能だった。

ボディ構成に、そうした応用力を持たせてしまうところに、大衆車してのミニのしたたかさがあるといえるだろう。

英国風にいうミニのエステートモデルが登場したのは、サルーン発売翌年の ’60年9月であった。

モーリス版には、旅人という名前がつけられ、トラベラーの綴りに( L )がひとつ多いのは、クィーンズイングリッシュならではのもの。ちなみに米国英語ではTRAVELERとなる。

ウッドトリムと呼ばれる木枠を用いたボディは、モーリス・ミニ・マイナーの兄にあたるモーリス・マイナーのエステートモデル、その名もモーリス・マイナー・トラベラーにも見られた。

エステートやワゴンと呼ばれるこの手のモデルが、元は木製の幌馬車から発展したことの名残ともいえる装飾である。

AUSTIN MINI COUNTRYMAN オースチン・ミニ・カントリーマン(63)
CAR No. A-AW7-1033600A
ENG No. SAMI-U-H1247374

先にモーリス・ミニ・トラベラーの項で、エステートモデルの登場は60年9月と書いたが、そのときのスタイルは ここに紹介したオールスチール(カタログではそう表記されている)だった。ウッドトリム版は、ひと月遅れでデビューしている。

両車の違いは、まさに木枠の有無だけ。 ミニのエステートは、Mark I時代の62年10月に、マイナーチェンジを行っている。

デビュー時、室内の左側後端にあったフューエルタンクを、ボディ後端の床下に移動し、フューエルキャップも、ボディ左側から右側に移した。

荷室を広くするという、大変真面目な改良である。

さらに、平らだったルーフに溝を入れ、外観上のアクセントをつけた。 この凹凸ルーフは、ミニシリーズのエステートとしては最終型になるクラブマン・エステートまで流用されている。

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ディティール

近くで見ても離れて眺めても、ゆったりと落ち着いた佇まいが美しい

古い車のボディーは木骨によって組まれていた時代がある。
トラベラーのそれは、’60年代の英国人が、さらに昔の旧き佳き英国に思いを馳せたモデルなのである。

トラベラー・エクステリア

ルーフに4本の溝が入るのは、同じ Mark I でも16年 10月降の後期型
ボディ右側後端にフィラーキャップがあるのも後期型の特徴だ。

サルーンのトランクハンドルと同型のリアドア用ハンドル
質感のあるヒンジが外に飛び出しているリアドア。味わい深い(?)

ごく初期はオプション設定だったウッドトリム。エステートモデル最大の特徴かつ美点である。ちなみにリアの間口は940mm。車幅の66%を占める。

サルーンと同様 のフロント回り。エステートモデルには、カタログを見 る限り明確なグレード分けがなかったようだ。フロントバンパーのオーバーライダーも標準装備らしい。

ルー カス製のシールドビームヘッドライトは他のミニと同じだ。
’66年以降のモデルに見られるセイフティボス付きド アハンドル

モーリスブランドの証し。サルーンと変 わりないボンネットバッジを使用。
当時のカタログ には、すべてモーリス・ミニ・トラベラーと表記されて いるが、ボディにはミニ・マイナーというバッジがある。

トラベラーとは記されていないのは、なぜだろうか?

雰囲気だけじゃない、現代でも通用する考え抜かれた実用性

サルーンの荷室は現代的な目で見れば少々使いにくいが、トラベラー&カントリーマンのそれは非常に進んでいた。

モノコックシャーシーのフロアは合成を確保する意味合いもあって凸凹があるものだが、それを板張りでフラットな空間にしている。リアシートを畳めば荷物室はさらに大きく広がり多くの荷物を収納することが出来る。

まさにトラベラー(旅人)の名にピッタリのミニであり、ファミリーレジャーに最適な一台であった。

トラベラー・インテリア

ボディ後半のサイドウィンドゥをロックするシンプル なつくりのストッパー。
リアシートを立った位置に固定する留め金。トイレのドアでおなじみのスタイル。

キックプレートの位置と形状はサルーンと変わらない。
エステートモデルのバッテリーは、リアシートの下にある。

この時のミニは、すべて現在とは逆のポジティブ(プラス)アース だった。

リアシートを倒すことによって得られるラゲッジスペース。
室内長は1,210mmもある。

サルーンと同型のペダル。

ドライバーの手元に向けて曲がる後期型のシフトレバー。
Mark I のエステートはサルーンと同じ 8MB型848cc エンジンを使用。

荷物を満載する と少々力不足だった。

オーバルメーターパネルを与えるなど、 比較的豪華仕様のエステートながら、ドアは質素なケーブルリリース式。

サルーンとなんら変わらないインストゥルメントパル。

オーバルパネル付きセ ンターメーターはエステートの標準装備。
タコメータ 一は非オリジナルで、後付けのものだろう。

ハンドル中央のホーンスイッチにモーリスのイニシャル。
ボディカラーのアーモンド グリーンに対するシート地は、ポーシェレイン(磁器の意) グリーンという淡いもの。

ワンポイント ミニあるある
ミニは世界中の著名人にも愛されていた。イギリスではビートルズが全員所有し、日本ではホンジャマカの石塚英彦さん等がミニのオーナーとして知られている。

カントリーマン・ディティール

もしやバンを改造したのでは? と疑ってしまいそうなウッドトリムのないボディ
カントリーマンとは記 されないバッジ

オースチン・ミニと同じ顔のカントリーマン。
フェンダーミラーは標準装備だった。

溝の あるルーフは後期型の証し。

妙に長いサイドビュー。 ウッドトリムがないと淋しい?
ホワイトのボディカラーにはレッド、もしくはブルーのインテリアが指定さ れていた。

Mark I エステートは8MBの848ccエンジンが使われた。
が、荷物を満載すると少々きつかった。

突然だが、Mark I の初期型はガソリンタンクを室内に置かれ、フューエルキャップをボディ左側に備えられていた。しかしこれはデビュー2年後に改められる。

この内装がエステート系の標準インストゥルメントだ。

’62年に登場した、オールスチールと呼ばれる木枠なしのボディー。
豪華な木枠付きのトラベラーの他にも、ファミリーユースを狙ったミニには、これらのボディーバリエーションや、エステートモデルは必要不可欠だった。

魅惑のトラベラー&カントリーマン(YouTube)

AUSTIN MINI SEVEN 1000 COUNTRYMAN MKII Stationwagon (Barn Doors) 1969 | SCC TV

Mark I ’59-’67

引用参考図書:MINI ALL MODELS

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